2013/05/29

「児童ポルノ禁止法」一部改定法案を読む

 注)この法律案については「改正」という言葉を使いたくないという私の一存により、以下、原文で「改正」とされている部分は「改定」と表記します。



 2013年5月29日、児童ポルノ禁止法の改定案が国会に提出された。児童ポルノの単純所持を禁止する他、「児童ポルノに類するもの」に関する記述も追加されており、アニメなどの表現規制にもつながる可能性があるとして話題になっている。
 それではこの法案、どこが問題なのだろうか。法学部でもなんでもないただの一学生である私が、素人目に解釈してみることにする。

1.「児童ポルノ」とは


 そもそも、「児童ポルノ」の定義とは一体どういったものなのか。児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(通称:児童ポルノ禁止法)の現行法令第2条をそのまま引用してみる。
第二条 この法律において「児童」とは、十八歳に満たない者をいう。
2 この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。
 一 児童
 二 児童に対する性交等の周旋をした者
 三 児童の保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者
3 この法律において「児童ポルノ」とは、写真、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に係る記録媒体その他の物であって、次の各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいう。
 一 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
 二 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
 三 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
 つまりまとめると、
1.18歳に満たない者が性交・性交類似行為をしている姿態
2.18歳に満たない者の性器等を触る行為に係る姿態
3.18歳に満たない者に性器を触らせる行為に係る姿態
4.18歳に満たないものが、衣服の一部および全部を着けておらず、性欲を興奮または刺激するもの
以上4点のどれかに該当する、 視覚により認識することができる方法により描写したもの、となる(原文では3項だが、わかりやすいように4項目とした)。
 勘のいい方はお気づきだろう。そう、実は靴下を片方脱いだたけの18歳未満の者の写真でさえ、児童ポルノになりうるのだ

2.児童ポルノの単純所持禁止


 次に、児童ポルノの単純所持に関する条文を見てみよう。これは、同法改定案において、第六条の二として新規に規定されたものである。同法改定案第六条の二、および第七条を以下に引用する。
第六条の二 何人も、みだりに、児童ポルノを所持し、又は第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管してはならない。
第七条 自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。自己の性的好奇心を満たす目的で、第二条第三項各号のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写した情報を記録した電磁的記録を保管した者も、同様とする。
単純所持は禁止されているものの、罰則規定はない。だが、「自己の性的好奇心を満たす目的で」という記述がなく、被疑者の故意性が無くても同法違反となる。そのため、自身が意図せずにコンピュータ内に保存した画像(キャッシュデータ)なども児童ポルノの所持として認められることになる。
 例えば、あるWebサイトをロードした際、ユーザーの知らないうちに、バックグラウンドでスクリプトを用いて自動的に児童ポルノ画像がキャッシュ(プリロード)された場合も、同法違反となる。プリロードは、現在Javascriptで一般的に利用可能である。

3.インターネットの利用に係る事業者の努力


 実はこれ、なかなかのダークホースではないだろうか。インターネット事業者に対し、児童ポルノのデータが拡散しないようにするための措置を講ずるよう求めている。以下に同法改定案第十四条の二を引用する。
第十四条の二 インターネットを利用した不特定の者に対する情報の発信又はその情報の閲覧等のために必要な電気通信役務(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第三号に規定する電気通信役務をいう。)を提供する事業者は、児童ポルノの所持、提供等の行為による被害がインターネットを通じて容易に拡大し、これにより一旦国内外に児童ポルノが拡散した場合においてはその廃棄、削除等による児童の権利回復は著しく困難になることに鑑み、捜査機関への協力、当該事業者が有する管理権限に基づき児童ポルノに係る情報の送信を防止する措置その他インターネットを利用したこれらの行為の防止に資するための措置を講ずるよう努めるものとする。
これは一体どうなのだろう。私はWebインフラエンジニアではないので、どのような対策をすればいいのか皆目見当がつかないのだが。そもそも、データが海外に流れてしまえばもう手は付けられないのである。

4.いろいろ詰め込まれた附則


 冒頭で述べた、「アニメなどの表現規制にもつながる可能性」がここに隠されている。同法改定案附則第二条を以下に引用する。
第二条 政府は、漫画、アニメーション、コンピュータを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するもの(次項において「児童ポルノに類する漫画等」という。)と児童の権利を侵害する行為との関連性に関する調査研究を推進するとともに、インターネットを利用した児童ポルノに係る情報の閲覧等を制限するための措置(次項において「インターネットによる閲覧の制限」という。)に関する技術の開発の促進について十分な配慮をするものとする。
2 児童ポルノに類する漫画等の規制及びインターネットによる閲覧の制限については、この法律の施行後三年を目途として、前項に規定する調査研究及び技術の開発の状況等を勘案しつつ検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
「調査研究を推進する」としているが、これでは実質「なにもしない」と言っているのと何ら変わりはない。何を持って推進とするのか規定されておらず、その研究は様々な視点からの意見を収集し、一部の団体の意見を一方的かつ全面的に取り入れた結果とならないようにするための施策が無い。
 また、これら全体を見回して、「『児童ポルノに類する漫画等』の規制ありき」な感は否めない。なぜ「児童ポルノに類する漫画等」だけが特にこの附則に明記されたのか、一切不明であることからも、それは明らかであろう。
 なぜ「児童ポルノ」では「『児童ポルノに類する漫画等』が『 児童の権利を侵害する行為 』」との関連性の調査研究がなされ、「殺人その他の刑法犯罪」に関しては行われないのか。またその調査研究対象が、「児童ポルノに類する漫画等」という、「漫画、アニメーション、コンピュータを利用して作成された映像、外見上児童の姿態であると認められる児童以外の者の姿態を描写した写真等であって児童ポルノに類するもの」という、いわば「二次元」のそれに限られているのはなぜなのだろうか。
 テレビドラマにも暴力シーンはある。ベッドシーンもある。深夜帯のドラマでは、女性が乳房を露出するようなものもある。そんな深夜帯のドラマには、視聴に対する年齢制限はないはずだ。それなのに、この法律改定案が目を向けたのはなぜ、「18禁」というカテゴライズのある「漫画等」、「二次元」だけなのか。

5.総括して、やっぱり単純におかしいと思う


 「児童ポルノ禁止法」は、18歳に満たない、「児童」と規定される者らの権利・尊厳を守るための法律である。そんな法律がなぜ、「漫画等」を規制する可能性を有するのだろうか。現実の子どもたちを守るための法律が、なぜ実在しない存在までも規制する可能性を有するのか。巷で言われている通り、国会議員のほうが三次元と二次元との区別がついていないのではないか。

 「児童ポルノに類する漫画等」の普及が進んだとされる昨今であるが、ここ数年では強姦罪・強制わいせつ罪の認知件数は減少傾向であり(平成24年度版「犯罪白書」第1編 第1章 第2節 2 - (5)参照)、一般に「児童ポルノに類する漫画等」が児童ポルノおよび性犯罪を助長しているという事実は認められていない。これは、この法律案を提出した高市早苗議員も認めているという(表現の自由を大幅に規制する法案に反対 | 参議院議員 山田太郎 公式webサイト参照)。
 ならば、なぜ「児童ポルノに類する漫画等」だけが「調査研究」の対象となったのか。他の犯罪において、その関連性の「調査研究」をしないのはなぜか。あまりにも不透明であり、不条理である。

 この法律改定案、その第三条は以下のようになっている。
第三条 この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意し、児童に対する性的搾取及び性的虐待から児童を保護しその権利を擁護するとの本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない。
さて、この条文は果たして壮大なネタなのか、それともブーメランなのか。
 ネタであっては困る。万が一「児童ポルノに類する漫画等」が規制された場合、それは立派に憲法21条に違反するのだから。

2013/05/18

変わったこと/変わらないこと

 みなさんお久しぶりです、篠崎です。一応生きてます。コミティアの時はどうもありがとうございました、お疲れ様でした。

 twitterにログインしなくなって(コミティア前後を除く)もうひと月以上経ちますけど、やっぱりなんとなくさみしい気がします。こんなにもコミュニティに飢えてたかな自分、とか思います。学校だと相変わらずのぼっちなんですがね。
 ほんで、年度変わっていろいろあったので、いくつか書いておこうと思います。

・コミティアに行きました

 5000円のお小遣いを握りしめて、5月5日のコミティア104に参戦して来ました。
 というか、往復の交通費で2000円近いとかどういうことなの。その時点で残金3000円じゃないですかやだー。ちょっと高価い薄い本だと4冊も買えば資金が尽きます。神奈川県在住の私でコレなのですから、ほんとうに首都圏以外って生きにくいんだなぁって思いました。
 結局、私が寄稿した合同誌「VisioN」を買い、その他にも色々買い、満足して帰途につきました。ちなみに財布の中の残金は300円でした。百合は買えませんでした。

・WILLCOMを解約しました

 小学校4年生の頃からお世話になっていたPHSインフラと、ついにお別れをしました。というのも、Arrows Me F-11Dが10800円で売っているのをAmazonで見つけてしまったので、こいつに日本通信スマホ電話SIMを突っ込んで運用することにしたのです。晴れてAndroidデビューしました。
 WILLCOM回線でAdvanced-W-ZERO3(WS011SH)を使い続けても良かったのですが、最近なんだか回線と端末が不安定なのと、個人的にあの会社の系列サービスを使いたくなかったのです。お察しください。
 ということで、WILLCOMのメールアドレスも消滅し、私は現在、携帯電話会社の提供するキャリアメールアドレスを持っていません。GMail3つとYahoo Mail2つ、Live Mailが一つ、あとはMy Operaのアドレス1つを主に運用しています。使ってないメールアドレスがあと2つか3つあるんですが。
 そして同時に、キャリアメールアドレスを持たないことによるデメリットを痛感している次第です。個人確認とかPCメールアドレスブロックとか。結局、日本はガラケーの余波を引きずったインフラ無しでは生きにくいのだと感じました。月400円高くなるけど、やっぱりWILLCOMを契約しておくべきだったんだろうか。日本通信のSIMの開通遅いし。
 2ヶ月経ったらスマホ電話SIMをMNPの弾にして、docomo本回線に乗り換えようかな。なんか2日前に日本通信から音声通話SIMをMNP弾にする際の規約改定プレスリリースが出たばっかりですけど、私は最低利用期間が2ヶ月な間にギリギリ回線開通できそうなので、その手もアリな気がします。端末はあるから、回線利用料だけで使えるしね。また検討します。

・またしても同人誌即売会に参加するかもしれません

 不思議ですね、活動は沈静化しているはずではなかったのでしょうか。なぜこのタイミングでイベント参加なのでしょうか。不思議でなりません。自分の立場を弁えていないとしか思えませんね。誰ですか、そんなことをする超絶クソアホバカアンポンタンは。私です。

 オールジャンル同人誌即売会「ゼロフェスタ07」に、何らかの形で参加する可能性が濃厚となりました。とあるサークルの合同誌へのゲスト参加になる可能性が一番濃厚ですが、先日のコミティアで「自分も何かカタチにしなきゃ」という原因正体一切不明の焦燥感を感じ、それに突き動かされてトチ狂った篠崎が、何か本を作ってしまうかもしれません。まあまかり間違って本など作ってしまっても、どこぞのRISOGRAPH を使って作る20P程度のコピー本になるかと思いますが。まあ期待しないでおいてください。詳細は追ってお知らせいたします。
 ゼロフェスタ07は7月21日の日曜日、横須賀市文化会館展示室にて行われる予定です。

 以上3点、とりあえず思いついた順に書きました。相変わらず、何やってんだろうかって感じです。
 ちなみに表向きの活動は沈静化しましたが、水面下でやっていることはいくつかあります。復帰したら色々やりたいな。ちゃんと本も作りたいし。

 それでは、本日はこのへんで。篠崎でしたー。