2012/08/16

表現技法としての『特撮』 〜東京都現代美術館「特撮博物館」〜

名古屋・京都を旅したときに使った青春18きっぷの有効活用を兼ねて、東京都現代美術館の企画展「特撮博物館」へと足を運んだ。
錦糸町から半蔵門線に乗り、中央林間方面に2駅。清澄白河駅から美術館までは、ユーモラスな案山子たちが案内してくれる。
5分ほど歩いただろうか。「現代美術館前」という交差点を渡ると、そこは既に美術館の敷地である。
午前11時頃であったと思う。目当ての特撮博物館は盛況であった。どのくらい盛況だったかというと、チケット購入に20分待ち、会場入場にもまた20分待ったくらい。かくして私は、その会場の中へと入っていった。

そこにあったのは、職人たちの、優れた技術の粋であった。
鉄骨の一本までリアルに再現された東京タワー。実際に映画とTVシリーズ両方の「日本沈没」の撮影に使われ、のちに「ゴジラvsキングギドラ」に登場する潜水艇として改造された「わだつみ」のミニチュア。細かに作り上げられたマイティ・ジャック号の造型。「青島要塞爆撃命令」のラストシーン、砲弾輸送列車の先頭を飾った(若干エラーのある)C53型蒸気機関車の模型。ゴジラの骨格などなど。3時間あってもまだ観足りなかった。
それでも、やっぱり「あの映像」が無ければ、ただ昔を懐かしむだけの展示になってしまっていたのだろう。

『巨神兵、東京に現る』

今の特撮に、何ができるのか。アニメでも3DCGでもなく、特撮で映像を創ることの意味とは何か。
この9分03秒の映像は、それらに対しての、樋口真嗣監督、また庵野秀明館長なりの回答なのではないだろうか。

特撮は技術ではない。表現技法なのだ。
技術は廃れていく。だが表現技法は廃れない。和声対位法だって叙述トリックだって空気遠近法だって、その技法は廃れることなく脈々と受け継がれている。特撮も、そんなふうに受け継がれていく、表現技法の一つであることを切に願う。

特撮は、子どもたちのためだけにあるものじゃない。
特撮は、大人たちのための娯楽にだって十分なれる。
あの映像の最後で巨神兵が私たちに向かって叫んだのは、そんな台詞のような気がした。

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特撮博物館 公式HP: http://www.ntv.co.jp/tokusatsu/
東京都現代美術館 特撮博物館 展覧会概要: http://www.mot-art-museum.jp/exhibition/137/1